2月15日、気象庁は関東地方で春一番が吹いたことを発表した。これは昨年より14日早い発表である。強い南風は翌日も続き、厚手のコートが不要と感じられるほど暖かかった。風が春の暖かさとともに花粉も運んできた。花粉症の鬱陶しい季節の到来である。
音楽に詳しくない私がその話題に触れることさえ憚られるが、やはり書いておきたい。
世界を舞台に活躍したマエストロ、小澤征爾氏がこの世を去った。享年88歳。1935年、中国・瀋陽(旧奉天)に生まれた小澤氏は、1959年のフランス・ブザンソン国際指揮者コンクールで日本人として初めて優勝を果たし、以降輝かしい業績を積み重ねてきた。2月11日の朝日新聞朝刊には、作家の村上春樹氏による小澤氏を偲ぶ寄稿文が掲載された。この中で村上氏は、小澤氏と共有したエピソードを綴り、彼の魅力や音楽に対する情熱、そしてその人生への深い敬意を表現している。情感を抑えた筆致で書かれた文章が深い哀悼の念を伝えている。もう二度と小澤征爾氏の指揮する音楽を聴くことはできない。村上氏が小澤氏をどれほど敬愛し、その喪失を深く感じているかが伝わってきた。
小澤氏が初めて海外を訪れたのは24歳の時、貨物船にスクーターを積んでの渡航だった。当時、欧米に出て西洋のクラシックを演奏する東洋人がどのように見られていたのか。そうしたことを「小澤征爾さん」は越えた。氏は自身の才能と人間力と音楽への愛で、世界に「小澤征爾」という日本人を認めさせた。それがいかに凄いことなのかは私の想像を遙かに超えている。
幼少期を中国で過ごした小澤氏は、中国に対する深い愛着を持ち続け、2005年には上海と北京でオペラの指揮を行っている。まさに音楽に国境は無い。
また、学生時代に愛したラグビーへの思い出も生前何度となく語っていた。氏が魅せられたラグビーには氏が愛した音楽に通ずる何かがあったのかもしれない。
小澤氏は多くの心に響く名言を残されている。その言葉は音楽に携わらないものたちの心にも響く。
「日本製の地球儀を眺めると、日本が赤く塗られていますでしょ。世界全体から見ると、日本語圏はあれっぽっちです。そこだけの価値観で一生を過ごすのは、もったいないですよ。」
今から60年以上も前に世界に飛び出し、音楽という世界で人種も国籍も言葉も越えた偉大な大先輩を失ったことを深く悼む。合掌
明るいニュースが一つ飛び込んできた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2月17日、鹿児島県の種子島宇宙センターから日本の次世代基幹ロケット「H3」2号機の打ち上げに成功し、目標軌道への投入を完了した。これは「H3」の初成功であり、日本の宇宙開発における重要な進展を示している。H3ロケットの開発は2014年に始まり、これまで約2200億円を投じている。このロケットは、新規開発した主エンジンの利用と、民生部品を活用したコスト削減により、1回の打ち上げ費用を約50億円と従来の「H2A」の半分程度に抑えることを目指している。H3の成功は、日本の宇宙活動の自立性や国際競争力を高める重要なステップである。
昨年3月のH3初号機打ち上げは、主エンジンは正常に作動したが、2段目エンジンの点火が確認できず失敗した。この失敗の原因は、2段目の電源系統に過剰な電流が流れたことにあった。JAXAはこの問題を分析し、再発防止の対策を施して2号機の打ち上げに臨み成功を収めた。これにより、日本は災害観測衛星やGPS衛星、国際宇宙ステーション(ISS)への補給船など、多岐にわたる宇宙ミッションの打ち上げが国内で実現可能となる。
ロケットの打ち上げ需要は通信衛星の増加や安全保障の観点などから世界的に高まっており、2023年の世界の打ち上げ回数は212回で、22年比18%増の過去最高を記録している。各国の宇宙開発競争が激化する中、大型化とコスト削減を両立したH3により、宇宙開発競争における日本の存在感を高めることが期待される。
打ち上げ成功。本当におめでとうございます。昨年の失敗から一年。もの凄いプレッシャーだったと思う。それを乗り越えての今回のリベンジ。JAXAをはじめ、関係者すべての方に敬意を表します。
H3ロケット試験機2号打ち上げライブ中継はYouTubeにアップされている。
因みに、あのイーロン・マスク率いるスペースX打ち上げ実績は、2023年で96回。まだまだ、先は長い。
さて、ニュースでも大きく取り上げられたが、2023年、日本のGDPがドイツに抜かれ世界第4位に転落した。ドイツの名目GDPは4.4兆ドル、日本のGDPは4.2兆ドル。約半世紀ぶりに日本がドイツの経済規模を下回る結果となった。円安の影響で日本のGDPはドル建てで減少し、一方でドイツはウクライナ侵攻以降の物価高や欧州中央銀行(ECB)の利上げによりGDPが押し上げられた。
生産年齢人口1人当たりの実質GDPでは、日本はドイツより1割少ない。再逆転するためには、生産性の向上が必須である。日本では長時間労働が成果に結びついておらず、労働時間はドイツよりも2割長い。また、高齢化が進む両国では労働力不足が経済に圧力をかけている。経済再浮上の鍵は、シニアの働き手を活用することや外国資本の誘致にあると日経新聞は報じている。
日本は少子高齢化が進行中であり、2050年には人口が1億人を下回り、65歳以上の人口が約40%に達すると予想される。このような状況の中、国内市場だけに依存する経済戦略には限界がある。
トヨタが時価総額の歴史的最高値を更新し、ここまで成長できたのは、グローバルな事業展開を進めたからである。「障子を開けてみよ、外は広いぞ。」という豊田佐吉翁の言葉は、国際展開の重要性を物語っている。大正時代に、社内の反対を押し切り上海に工場を設立した豊田織機は、現在のトヨタ自動車の礎を築いた。
グローバル市場での勝負は、日本経済の成長のカギである。
当社ホームページ「社長対談」に、元三井物産専務執行役員兼東アジア総代表の小野元生氏との対談を掲載している。
第一弾は「海外で仕事をする楽しさと難しさ」
第二弾は「中国・台湾でのビジネスについて」 2月22日アップ予定
第三弾は「グローバル人材に求められるもの」 2月29日アップ予定
皆様のグローバル展開のヒントとなれば幸いである。
2月18日記